8月の特集・白い雨傘を探して Recherdhe des parapluies blancs

ガソリンスタンドの建物の魅力にとりつかれて以来、私はこれまでに5000店以上のスタンドを見てきたが、いつもMobilのスタンドを一番に追っていた。Mobilのスタンドを見にいったついでに、他のブランドの店もちょっと見ていたような時期もあった。 それはやはりMobilのスタンドが持つスマートな雰囲気が好きだったからだ。そしてその中でも、この円形キャノピーのあるスタンドは特別な存在だった。

農村、山村、街道沿い、日本のどんな地方にあっても、エリオット・ノイズが描いた未来的なイメージは確かに具現化され、それでいて景観を損ねることがなかった。ガソリンスタンド巡りに遠くまで出かけた帰り道、その日の締めくくりに円形キャノピーを一目見ておきたくてわざわざ寄り道したことは一度や二度ではない。ノイズ自身はこの形を、森の中で見かける白いキノコにインスパイアされたようだが、私は白い傘や回り続けるコマを連想していた。『白い雨傘を探して』はいつのまにかガソリンスタンド巡りのテーマのようになっていたのだ。

しかし、優雅なデザインのこのキャノピーにも重大な欠陥があった。屋根の部分で集めた雨水を中央の支柱を通して下に落とすという一見合理的に見える構造が、実際には多雨多湿な日本の気候に合わず、数年もしないうちに支柱の根元から錆びて腐るケースが続出したのである。支柱一本で支える傘型の形状は強風にも弱く、台風シーズンには根元の腐食したこのキャノピーが倒壊するのではないかと心配された。もちろん積雪量の多い地域でこのキャノピーが適応しなかったのはいうまでもない。

またこのキャノピーの特徴ともいえる柔らかな間接照明には、「暗い」「使い物にならない」という不評が現場から続出し、オリジナルの間接照明を廃してあとから照明装置を追加した改造例もいくつか見られた。

結局、この円形キャノピーは短命に終わったものが多く、いまも残っているものは数少ない。「ああ、前はうちもアレだったんだけどねぇ、具合よくないからだいぶん前に壊しちゃった」という話を聞いたこともあった。

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