8月の特集・白い雨傘を探して Recherdhe des parapluies blancs

往年のMobilのサービス・ステーションを知る人ならば、このタイトル写真を見て何かしらある種の思いがこみあげてくることだろう。はじめてこの光景を見たとき、私はしばらく動くことができなかった。たった一つの願いごとが、いきなり三倍になって現実に叶ったような気がしたのだ。神様もときには無茶なことをする。

これは昭和40年代中頃から50年代にかけてMobilの店舗デザインを特徴的なものにした有名な円形のキャノピーである。しかも豪勢なことに一つのステーション内に3本も林立している。アメリカには4本立っている巨大なステーションがあるのを写真で見たことがあるが、まさか日本国内にこのような光景があったとは、それまで夢にも思わなかった。

この円形のキャノピーは、著名な建築家で工業デザイナーでもあったエリオット・ノイズ(Eliot Noyes, 1910-1977)によって1965年にデザインされた。ノイズはサービス・ステーションが周囲の景観と調和することを意図して派手な色彩を遠ざけ、キャノピー、計量器、ペガサスマークに共通して円柱(シリンダ)をモチーフとしたデザインを制作した。

新しいMobilのブランド・デザインは、アメリカだけでなく世界的な展開が図られ、日本でも現在のデザインと同じサインポストが1966年9月に登場、69年にはこの円形キャノピーを取り入れたペガサスステーションの第一号が愛知県にオープンしている。

以来40年が経過して多くは改装されたり、店舗廃止となってその姿を消してしまったが、最近のMobilのスクエアでフラットなキャノピーにも、天井側(下面)にそのデザインを継承して円形のリブが施されているものを認めることができる。

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