● 魅力ある防火壁の壁画は、廃止店舗に限って見つかるわけではない。営業中の店舗においても、すばらしい作品を発見することができる。
たとえば、かつては防火壁の両面に意匠が描かれていたものが、その後隣接地に建造物が建ったために外側の壁画が覆い隠されてしまう場合がある。その後、給油所の内側の壁は何度も再塗装され、あるいは石油ブランドの合併統合によって、以前とは異なる意匠が描き込まれていくが、長い年月を経たのちに、ある日隣接する建物が取り壊され、そこにかつて封じ込まれた壁画が出現することがある。
直射日光の影響をほとんど受けなかったその壁画は、おどろくほど鮮やかな色彩を残していて、さながら古墳の石室の壁画を発見したような感動をおぼえる。
● 最近の給油所の塗装は、商標意匠やロゴの部分は特殊な印刷がされた粘着シートを貼ったものが主流であり、短時間の作業で低コストを実現している。しかしその仕上がりは正確で均質だが味わいに乏しい。