スカイツリーの足元で

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いまさらもう説明するまでもなく、これは東京スカイツリーの建設現場だ。この東武橋の上は近所の人や遠方からはるばる見物に来た人、たまたま通りかかった人などで連日ごったがえしており、その誰もがカメラや携帯電話でやがて世界一となるこのタワーの建設風景を写真に収めている。

この写真は2009年の10月末に撮影したもので、この日の高さは183m。いまはもうその倍の高さまで工事は進んでいるが、思えばこれぐらいの背丈のときが、力強く土を押し上げて生えてきたタケノコのようで迫力があったし、ロータリーエンジンの回転子のような優雅な円弧を描いた三角形の断面が、しだいに円に移行していくときにできる曲面の美しさにうっとりと見とれたりしたものだ。完成予想図を目にするたびに、展望台など要らないから250mぐらいでやめておけば格好よかったのにと個人的にはずっと思っている。

ところでこの場所に佇む人、通りかかる人はみなこの巨大な建造物を見上げているのだが、それとは正反対の方向、ちょうどこの写真を撮っている位置から背中に振り向いたところに一風変わった建物がある。

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これは元JOMOの給油所だった建物だ。給油所が廃業した後、しばらく前まではレンタカー会社がオフィス兼駐車場として利用していたが、現在はレンタカー会社も退去してそのまま空家になっている。なんだか平面構成に凝りすぎた70年代の注文住宅のようなユニークな形状をした建物は、見る方向によって表情が大きく異なる。外から見た限りでは、区切られた室内のレイアウトの複雑さに、給油所としてどういう動線の配慮があったのか首をひねる。だが、その奇妙さがかえってこの建物への興味と愛着をかきたててしまう。

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nari5まだ部分的に残っている防火壁をつぶさに見て裏側にまわると、JOMOの塗装が剥がれて共同石油時代の塗装が出てきているところを見つけた。

JOMOはENEOSとの経営統合により、7月頃から看板の掛替えや新塗装工事が行われる予定になっている。この給油所がもし生き長らえていたら、どんな塗り分けでENEOSの色を纏っただろうかと、そんなことを考えた。

スカイツリーの完成はまだ先のことだが、すでに周辺の地価はどんどん上昇していると聞く。この建物は言問通りと曳舟川通りが合流して浅草通りとまじわる交通量の多い交差点にあるので、このまま放置されることはないだろう。いずれ早い時期に取り壊されて商業ビルが建つに違いない。

2010年9月4日追記

ひさしぶりにこの場所を訪れてみると、予想通りこの建物はすでに取り壊されて、敷地はすっかり更地に整地されていた。それにしてもスカイツリーを撮影する人々の数はますます増え、その人々を当てにした飲食店や商店がどんどん増えているのにも驚いた。

2 Comments

  1. はじめまして。
    私と趣味がぴったり重なる方がいるとは思いもよりませんでした。

    子供のころからガソリンスタンドを見るのが好きで、車で遠出するたびに窓の外を眺めていました。
    毎年のように隣の県の親戚のもとへ家族と行っていたのですが、通るたびに櫛の歯が欠けるようにガソリンスタンドがなくなっていくのをさびしく思っていたものです。たとえば日石と出光のガソリンスタンドが一本の道を挟んでにらみ合っていた情景が、日石がENEOSとなって数年後に出光だけとなり、その翌年通った時には出光もなくなってしまっていたり、と。
    今年大学進学のために都会に出てきましたが、こちらはガソリンスタンドがなかなか少ないですね。
    地元はモータリゼーション全開ですから。

    なくなってしまったガソリンスタンドといえば、地元の最高峰の山の中腹にある集落に、二、三年前まで三菱→ENEOSの店舗があったのですが、山小屋風の建物だったのであれは好きでしたね。
    でも、松村さんが写真に残したガソリンスタンドのいくつかには、それ以上に素敵なものがたくさんありました。

    これからも見させていただきますのでどうかよろしくお願いします。

  2. KENTARO様

    ご覧いただき、ありがとうございます。
    ガソリンスタンド・ノートにはこれまでに50店舗を超える給油所を紹介してきましたが、写真撮影は許可していただいたものの、HP掲載は許可が取れなかったものがたくさんあります。また、ハートを掴んで離さないすばらしい給油所なのに、言葉では説明のしようがないものも数多くあり、それらはまだ未公開のままになっています。
    これからも少しずつですが、紹介できるように努力していきますので、よろしくお願いします。

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