沖縄に駐屯する米海兵隊基地の正門と県道をはさんだ真向かいに、平屋の古い商店家屋が数軒並んでいる。いずれも沖縄独特のセメントや漆喰でつくられた軒の低い簡素な建物の一群。そのいちばん端に基地の名前を取った床屋があったが、訪れたときにはすでに廃業していた。
近隣に軒を連ねている商店群の建物とほとんど同一の構造で、建具も共通していることから、最初から床屋として建てられたものではないようだ。強い日差しや季節的な防風雨を避けるかのように窓は小さく、面格子が取り付けられている。いずれにせよ内地の床屋のスタイルとは大きく異る。
もちろん基地の中にもバーバーはあるはずだが、それでも正門の前で米兵や米軍関係者を相手に、床屋商売が成立していた時代があったのだろう。シンプルなGIカットやクルーカットであっても、日本人の繊細でていねいな技術が好まれたのかもしれない。