はじめて訪れた街にアーケード商店街があれば、できるだけ歩いてみる。アーケードの中も興味深いが、ひそかに楽しみにして探すのはアーケードと直交する細い脇道にひっそりと佇む店舗や飲食店だ。とくに脇の通りに店を構える小さな美容室や理髪店には、アーケード内の店とも、あるいは住宅地の中やバス通りに面した店舗とも異る一種特有の表情がある。

この店舗は窓面積を最大限に確保している以外は、とくに美容室らしい特徴もないように見えるミニマルなデザインで、ミルクホールや喫茶店と言っても違和感がない。
化粧ガラス(チェッカーガラス)を通してぼんやりと見える店内の様子は、まるで解像度の低いドット絵のようで、店の奥で人が動くたび、かげろうのようにゆらゆらとその影が揺れている。