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私鉄線の踏切の遮断機が上がるのを待っている間、なにげなく目をやった道路沿いの建物にちょっと驚いた。
じつにみごとな扁額である。まるで篆刻のようでありながら、いまでも通用するポップな感覚の文字が、几帳面に一寸の乱れもなくトタン庇の上に並んでいる。モータリゼーションの波がこの地方にも押し寄せてきた頃に、新しい時代のゆたかな生活に対する人々の夢や、スピードへのあこがれを込めたこの文字は、地元の看板屋が考えたのか、それとも工場主がちょいと意匠には腕に覚えがあって自分で図面を引いたのか。

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工場主と看板屋が、首にかけた手拭いで汗を拭き拭き、図面を前に相談をしていたその日から、すでに半世紀以上は経っているだろう。
このあたりは関東平野のど真ん中で、最も暑い場所の一つである。