地方都市やその郊外を走っていると、ときどき地元家具店の大きな建物を見かける。
家具店というのはなにしろ扱う商品の一つ一つが大きいので、当然大きな建物を用意しなければ豊富な品揃えでお客さんを迎えることができない。
地域随一の品揃えを維持していれば、婚礼や引越しのたびに堅実な需要があったのはすでに遠い昔。いまは北欧の倉庫式家具屋やネット通販に顧客を奪われ、大きな建物はひっそりとその役目を終えようとしている。
この近くには巨大な国際空港がある。おそらく家具店の建物よりも空港のほうが後からできたと思われるのだが、いま建物はちょうど離着陸の進路の真下に位置していて、今日もアメリカに向かう飛行機、アメリカから到着した飛行機がつぎつぎと、この大きな文字の上空を通りすぎる。
家具屋の建物はちょっと物憂げな表情をした白い巨象のように、毎日国道の脇からその飛行機を見上げている。