瀬戸内海に面した古い町で見かけた理容室。
扉は新しくアルミ製のものに付け替えて補修してあるが、窓枠はすべて木製。だがそう古い建物ではない。おそらく昭和35年から40年頃のものではないだろうか。
理容室建築では、入口の扉部分を斜めにセットバックさせて呼び込む様式が多いが、この建物では入口を二面接道の角に配置し、右手横の部分を斜めに引き込んで、そこに生じた側面も採光のために利用している。
そして逆の側からさらによく見ると、入口扉の面もセオリー通りにわずかに角度を取って配置されているのがわかる。
現在は横丁をはさんだ隣は更地の駐車場となっているが、かつては黒々とした低い木造の二階家屋が並んで、日陰の多い通りだったのだろう。横丁側の壁面もすべて窓にして、とにかく外光の確保に徹底している。
この日は休業日だったが、開店していれば、この建物は店内のどこに柱を取っているのか見せてもらいたかった。
軒下に活けられた黄色いユリが印象的だった。