特別な用事もないのに、ぶらりと静岡市によく足を運ぶ。静岡は街が空洞化していない。中心の繁華街は人で賑わっていて活気がある。そしてその周囲には城下町らしく、かつては商家や職人の家が建ち並んでいたことを思わせる町並みがある。空襲でほとんど焦土となった後に復興した、同じような県庁所在地クラスの他の地方都市と比較しても、静岡にはいつも独特の明るさと賑わいがある。

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静岡のもうひとつの魅力は、町並みの中に静かにとけこんでいる、程好い古さの建物が多いことだ。古いといってもたかだか戦後の復興期に建てられた商店や倉庫や車庫といったものだ。特に目をひくわけでもなく、歴史的な価値があると誰かが評価するわけでもなく、何の観光資源になるわけでもない。だがその前を通ると建物が発する静かなささやきに、思わず足が止まることがある。

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「ねえ、ちょいとオイラの話を聞いとくれよ。この街にはいろいろ不思議で楽しい話があるんだよ。」
車庫の壁がそう語りかける。

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やがて夕暮れが近づいて、そろそろ帰途につかなければならなくなるまで、建物の声に耳を傾けながら、静岡の街をあてどもなく見て回る。