第149回直木賞は桜木紫乃氏の「ホテルローヤル」が受賞した。

royal

これはその小説とは何の関係もない、道端の看板だ。
5月にしては照りつけるように暑い豊前の国道を走っていて、偶然見つけた。行橋市にはいまもTOTOの工場があるが、TOTOが東洋陶器から社名を変更したのは、昭和45年頃のことだから、この看板はそれより前に制作されたものだろう。

たかがホテルの看板である。ラブホテルが乱立する前のモーテル期のさらに少し前、庶民も競って自家用車を持つようになった時代の、おそらくは連れ込み宿の看板だろう。しかし見るほどに味わい深い。
ロイヤルの一文字一文字がていねいにデザインされ、異国情緒や秘め事への期待感をふくらませている(とくにロの字がすばらしい)。
日本刀の刃紋を連想させる、あるいはぬらりと光る鯨の背のようなこの黒白の地柄は、40年前はどんな色合いだったのだろう。隅のほうに寂しく妖しく光る二つの五芒星は何を暗示しているのか。

「ホテルローヤル」もラブホテルを舞台とした短編の連作だという。誰もが直木賞受賞の興奮を忘れたころに、いつかひっそりと読んでみたいと思う。